住宅資金 ・ 教育資金 ・ 老後資金 ・ 保険 ・ 年金 ・ 相続 ・ 税金 ・ 投資運用など


C O N T E N S














 皆様の関心事に広く対応する
 テーマを取り上げております。







 ◎ コンタクト


 ◎ サイトマップ


 ◎ リンク


 ◎ トップページ






タイトル

妻のライフワーク


 2010年2月から2011年1月まで、一年間FPエッセイ掲載を休みました。この間、2010年8月に開店したコミュニティー・スペース「しぇあ〜どぷれいす高井戸」の開設準備と開設後の立ち上げに多くの時間を割いてきました。

 今回のエッセイでは、「しぇあ〜どぷれいす高井戸」開設のいきさつ、そして妻が店長を務める「私のおはこ」開業の物語をお伝え致します。

しぇあ〜どぷれいす高井戸とは

 2010年8月5日、しぇあ〜どぷれいす高井戸がひっそりオープンしました。しぇあ〜どぷれいす高井戸の中には、妻が店長を務める私のおはこと私のFP暮らしのコツ事務所が同居しています。つまり夫婦二人で運営するスペースです。

 しぇあ〜ど(Shared)とは「共有されている」という意味があります。まずは、私のおはこFP暮らしのコツ事務所がスペースを共有しています。また、私のおはこではスペースをいろいろな形で利用しています。

 しぇあ〜どぷれいす高井戸の入り口


 しかし、単にスペースが共有されているだけではありません。地域の人々の“思い”が共有される場(Shared Place)の実現を目指しているのです。

何のお店ですか?

 私のおはこの事業の柱は三つあります。「貸し棚」「着物のリサイクル」そして「貸しスペース」です。

 店に入って右側にある貸し棚は全部で32棚あります。一つ一つの棚にはそれぞれ棚オーナーがいます。開店時には半分ほどしか棚が埋まっていませんでしたが、現在は、手作りが得意な主婦の作品で埋まっています。

 貸し棚に並ぶ主婦の作品

 左側の着物リサイクルコーナーには、ご近所の奥様から持ち込まれた着物が数多く展示されています。また古い着物をほどき、その生地を使って洒落た洋服に作り替えた着物リメーク作品も展示されています。

 店の中央には、最大8名が座れるテーブルが設置されています。カルチャーテーブルコーナーと呼ばれる場所です。

 着物リサイクルコーナー


 「ここは何のお店ですか?」。初めてお店に入ってこられたお客様の多くが最初に尋ねる質問です。店の外から貸し棚が見えた方は“レンタルボックス”の店かと思って入ってきますし、一方展示してある着物に目が行ったお客様は着物のリサイクルショップと思って入ってこられます。更には、貸しテーブルで行われる教室の様子が気になって入って来られる方もいます。

 造花作り教室風景

 「ここは何のお店ですか?」と聞きたくなる気持ちは良く分かります。いろいろなことをやっていることが即座に理解できないからです。しかし、ひと通り店のコンセプトをご理解いただくと、やはり大半のお客様から「なんだかとても楽しいお店ですね」という声が返ってきます。

専業主婦の経験から生まれた妻の夢

 妻は、長い専業主婦生活を通じて、いろいろな得意技を持った主婦が大勢いることを知っていました。作品作りが得意な方、人に教える技術や知識を持っている方です。この方々が気軽に活躍できる状況を作り出せたら良いのにという夢を持ち続けていました。

 妻は団塊の世代です。同世代に母親が残した着物の処分に困っている方が多くいることも知っていました。自分でも着物を着ないし、子や孫も着物に興味がないとなると処分するしかありません。亡くなった母が残した大切な着物をゴミとして処分するわけにもいかず、古着屋に持ち込んでも二束三文の査定が待っているため、なかなか処分できないのです。

 一方、古い日本の着物から洋服に作り直すことが得意な方もいます。

 着物談義に話がはずむ装荷

 日本では古い着物として敬遠されるものでも、外国の奥様に喜んで買っていただけることも知っていました。そして、いらなくなった着物の持ち手と値段が安い古い着物を手に入れたい人との仲介ができれば良いのにとの夢も持ち続けていました。

 母の介護から解放され自由となる時間ができたらいつかチャレンジしてみたい、そんな妻の夢をずっと横で聞いていたのです。

 私の母の介護の担い手は、妻と私の姉の二人の女性です。介護が続く限り、妻の自由となる時間は大きな制約を受けます。しかし、介護は終わりがなかなか見えません。夢の実現がいつになるのか分からないことになります。

 そこで2009年夏、一つの決断をしました。“母が天国に召されるのを待つことをやめる”という決断です。介護を継続しながら妻の夢を実現することにしたのです。

 幸いなことに、実家の一部が、店舗用倉庫として長年使われていない状態が続いていました。そのスペースを活用して私のおはこを開店することにしました。

 介護を継続する妻の問題は、一日の間に何度も母の様子をみるため店を離れなければならないことです。お店を始める以上、いちいち閉店の看板を出すわけに行きません。その問題の解決は、FP相談のかたわら私が店番役を務めることです。二人で店を切り盛りすれば、介護の優先度を落とさずにお店を運営することが可能になります。

 店の奥の一角がFP事務所

在庫を持たないビジネスモデル

 開業の為に必要な費用は、店舗の改装と店内備品の調達が大半を占めます。開業費用を節減するため、天井・壁・床の大工工事、それに上下水道・電気工事等の基礎工事は専門家にお願いしたものの、残りは全て手作りで行いました。開店準備を知ったご近所の方や友人から不要となった家具・調度品や冷蔵庫・電子レンジ・ポットなど、利用出来るものは何でもいただきました。

 事業継続の為には赤字経営は避ける必要があります。そこで、事業運営に関し、一つの方針を持ちました。それは“在庫を持たない”という考えです。

 店内備品はすべて手作りか自分で組み立てる

 貸し棚ビジネスは、貸し棚利用料と売上に応じた販売手数料が収益となります。リサイクル着物ビジネスは委託販売方式により、やはり売上に応じた販売手数料が収益となります。貸しスペースも利用料が収益です。つまり仕入れの費用が一切かかりません。

 開業後の店の運営維持費は、水道光熱費と消耗品、それに交通費くらいのものです。これであれば、大きな売上がなくとも黒字経営を続けることができます。また店長である妻のプレッシャーも軽減されます。

 家賃のかからない分は、貸し棚利用料や委託料率を低く設定することで、出品者の負担を軽減することにしました。

 そして、開業の決断から一年後の2010年8月5日、まさしくお箱(八五)の日に開店を迎えました。

おはこ(十八番)を持っている方を応援する

 作品作りが得意な女性は多くいます。作品のレベルが趣味の領域を超えていたり、独創的なアイデアの作品であっても、いままでその作品を発表する場が限られていたり、販売する場が無かったのです。

 趣味で作った作品は、友人にプレゼントするか、同じ趣味を持つ仲間と展示即売会を開いて作品を販売するにとどまっていました。繁華街にあるレンタルボックスは、貸し棚利用料も高く、とても主婦のお小遣いでチャレンジできる額ではありません。つまり敷居が高いのです。

 外国の奥様を連れてこられる方も
増えてきました


 私のおはこの貸し棚は、繁華街にあるレンタルボックス店の棚の倍の広さで、半額の利用料を目指しました。月額の利用料は2,000円台です。棚のスペースが広いので二人で共同利用すれば一人当たりの利用料は1,000円台に収まります。仮に思ったように売れなかったとしてもこの金額であれば主婦の財布の中身を大きく痛めることはありません。

 出店の敷居が低くなったことで思い切って出店しやすくなります。貸し棚の一つ一つは小さなお店です。

 受講希望が多い初心者対象のパソコン教室

 自分のお店に出す作品の選定、値付け、ディスプレイはすべて自分の判断で行うことになります。ちょっとしたオーナーの気分を味わえます。そして、自分の作品を誰かが買ってくれることに喜びを感じます。

 貸しテーブルの利用料も一時間500円と低く設定してあります。これであれば生徒が二三名集まれば教室が開けます。自宅で教室を開くのは大変だと考えていた方も、これであれば気軽に教室を開くことができます。

 作品作りが得意な方は貸し棚を、何か教えることが出来る方は貸しテーブルを利用することでそれぞれのおはこ(十八番)を活用する場を確保できることになります。今まで、お店を持ちたい、教室を持ちたいと考えていた、おはこ(十八番)を持つ方の背中を押し、応援する店が私のおはこです。

地域に根ざしたビジネスを目指す

 貸し棚の売上を伸ばすには、来店者の数を増やす必要があります。良い作品を多く展示していただくだけでなく、いろいろなイベントを持つことでお店のファンを育てることが重要です。お店にくることが楽しいと感じてもらえれば、その方が積極的に友人や知人にお店を紹介してくれます。

 開店から半年が経過し、お店の認知度が徐々に高まっているとの実感がしています。英会話教室、パソコン教室が始まりました。

 映画の夕べでは、映画の後、
お茶とケーキで映画談義が盛り上がる

また俳句教室、健康麻雀教室も近々始まる予定です。そして開店時のイベントとして始まった「映画の夕べ」も定着してきました。

 同じ地域で暮らす人が、出店者や先生となり、そしてお客様や生徒となることで、自然と地域の集まりどころとなってきます。

 私のおはこ店長である妻の役割は、貸し棚の商品を来店されたお客様に説明し勧めること、また教室やイベントに興味ありそうな方に参加を勧めることです。そして、店長のもう一つの役割が、人と人をつなげることです。出品者とお客様、そしてお客様同志で会話がはずむ風景が増えてきました。

 介護を続けながら、店長の仕事が加わった妻は、以前とは比べ物とはならない忙しさです。しかし、この忙しさはちっとも苦にならないそうです。好きなコトに打ち込めるライフワークに出会ったのです。

 人と人の和を広げる、これが店長のおはこ(十八番)なのです。



2011.2.22  木下 利信