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成功体験と失敗経験


 「体験」と「経験」、似たような言葉ですが、大きな違いもあります。また「成功体験」とは言いますが「失敗体験」とは言いません。逆に「失敗経験」とは言いますが「成功経験」とはあまり言いません。

 体験と経験をしっかり使い分けることで仕事の進め方が一味違ってくる。そんなテーマを今回のエッセイで、取り上げます。

アソコの排除

 人と人のコミュニケーションで大切なのは言葉です。日本人同士が同じ日本語を使って会話をしていても意思疎通がうまく行かなかったり、誤解を生じたりします。

 私が現役会社員だった時、言葉使いで気をつけたことの一つが「アソコの排除」です。

 某生命保険会社が毎年発表するサラリーマン川柳入選作の一つに「アレどこだ?アレをコレするあのアレだ」というものがありました。長年連れ添った夫婦同士であれば、夫が言うところのアレ、コレが何を意味するのか、妻には分かるのかも知れません。しかし、ビジネスの世界では許されない会話です。

 アレ、ソレ、コレは指示代名詞と呼ばれます。仕事上の会話でこの指示代名詞が含まれた会話に遭遇すると、必ず「アレとは○○のことでしょうか?」と確認をする習慣が付いていました。
実際、確認することでアレ、ソレの意味するところが全く異なっていたということにたびたび遭遇しています。

 もし確認しないまま、思い込みで仕事を進めていたら、起こす必要のない問題を起こし、その解決のために無用のエネルギーを費やすことになり兼ねません。

ビジネスの世界では体験より経験が重要

 言葉に対して共通の意味や理解を持ち、適切に使用することがコミュニケーションを円滑化する第一歩となります。

 「体験」と「経験」、これも現役時代、意識して使い分けていた言葉の一つです。

 「体験」を国語辞典で調べると、「直接自分自身がそのもの、そのことがらにぶつかること」と書かれています。怖い思いや哀しい想いをした体験もあれば、嬉しかったり、感動するような体験もあります。つまり、体験とは「やってみたこと」や「遭遇したこと」そのものです。

 一方、「経験」という言葉は辞書で「実際にやってみて得た“知識や技能”」と書かれています。即ち、体験した結果、新たに身に付くことがあると経験と呼ばれる状態になるわけです。

 従って、仕事の場では経験を積み上げることが重要であることが分かります。

 実は、経験という言葉にはもう一つの意味があります。

それは、「実際に見たり、聞いたり、試したりして、それによって“人が変わっていく”こと」という意味です。

 ビジネスの世界では、いろいろな体験をします。そしていろいろな体験を通じて知識や技能を積み上げ、経験を豊かにしていくことが大変重要なことです。しかし、知識や技能を積み上げていくこと以上に大切なのは、体験を通じていかに自分自身が変われるかです。

なぜ成功体験は駄目なのか

 仕事で失敗すると何が起きるでしょう。技術者であれば、不良品を発生させたり、営業職であれば、お客様からクレームを受けたりといった結果に直面します。そして、それが原因で上司にしかられます。場合によっては人事考課に影響します。上司にしかられなかったとしても、自己嫌悪に陥るなど、自分に痛みを感じることは避けられません。

 痛みを感じたり、悔しい思いをすると、次からはその失敗を繰り返したくないと考えます。そのため、自然と考え方ややり方を変えることになります。

 一方、仕事で成功する、あるいは目標が達成されると、どうなるでしょう。うまく行った訳ですから、次の仕事で自らの考え方ややり方を変えることは必要ありません。つまり成功するという体験からは変化は生まれないのです。

 職場の上司が部下に対して昔話をすると、たいてい成功体験の自慢話になります。自分が若かったとき、いかにして大型の商談を決めたかとか、新商品の開発で活躍したかといった話題です。昔話を披露するだけなら良いのですが、昔の自分のやり方を部下に押し付けるようになったら要注意です。こんな上司がいたら、左から右へ聞き流しなさいと若い人にアドバイスすることにしています。

 部下にとって有難いのは、上司や先輩の成功談ではありません。逆なのです。もし、過去の失敗事例を語ってくれる上司や先輩がいたら、それは宝の山だと若い人に言います。なぜ失敗したのか、失敗のあと、どんな対応をしたのか、といったことを、まだ体験の幅が狭く、経験の浅い若い人に語ってあげることの方が、はるかに有益です。

成功経験が人を成長させる

 自分は失敗経験ばかりを繰り返していると考える人は、是非自問自答してみて下さい。失敗経験ではなく失敗体験の連続ではないかと。

 前々回のエッセイ「果因(かいん)の法則」で、「結果には必ずその結果を生み出す要因がある」という考えを紹介しました。同じ考え方、同じやり方を繰り返している限り、再び失敗するという結果につながります。

 失敗したと自覚したら、次はやり方を変えてみるのです。時としてより重大な失敗になることもあるかも知れません。しかし、なぜ失敗したのだろうか、その要因を考えた上で、行動を変えていく姿勢が身に付けば、次第に成功する確率は上がっていくのです。

 いかに失敗経験が重要だと言っても、仕事の場で失敗ばかりしている訳には行きません。与えられた目標をしっかり達成するという成功を積み重ねることでライスワークになるのです。

 成功(目標達成)した後が重要になってきます。成功すると次の目標が一段高くなることが一般的です。目標自体が変わらなくても、より短時間で仕上げるといった工夫も求められます。成功した仕事であっても、考え方ややり方を変えることでより大きな目標達成、成功がなされるのです。つまり、成功した上で、かつ仕事の取り組み方を変える、成功経験が極めて重要になるのです。

 失敗経験は自分が変わるチャンスになります。そして成功経験は自分が成長することにつながるのです。

FPにも活きる体験と経験の使い分け

 失敗経験の大切さを理解すると、失敗に対する恐れが小さくなります。更には、失敗そのものを楽しむ余裕も生まれます。つまり、自分が変われるチャンスを得られたのだという、前向き思考に切り替えられるのです。

 会社を早期退社し、独立系FPとして最初の3年間を修行期間と位置づけました。修行期間で心がけたことは、いかに実務体験の幅を広げるかということと、一つ一つの体験を失敗経験と成功経験に分類し、FPとしての仕事の進め方を進化、改善させることでした。

 失敗を恐れない姿勢を保てたお陰で、FPという仕事の楽しさを実感できるのです。

 そして、会社員時代に身に付いた「アソコの排除」の習慣は、クライアントとのコミュニケーションでも大いに役立っています。

 となりで、妻が友人と電話をしている声が聞こえてきました「それじゃ、あす○○時にアソコで会いましょうね」と。おいおい、大丈夫かと思いますが、妻いわく、「女性同士の会話で、アソコ抜きの会話は考えらない」そうです。ビジネスと異なる世界があることも事実です。

'09.6.15  木下 利信