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皆で作ろう、今晩の夕食


 皆さんの中に、小学生のお子様をお持ちの方はどれだけいらっしゃるでしょうか?少子高齢化の時代、小学生のお子様を持つご家庭はそんなに多くはないかも知れません。一方年配の方々で、小学生のお孫さんに持つ方は多いのではないでしょうか。

 子供たちは日本社会にとって共通の宝です。何らかの形で子供達の教育のお手伝いをしたいと考えておられる方は多くいらっしゃいます。しかし、自分の子供や孫以外の子供たちと直接接触する機会が殆どないのが実態です。

金銭教育の狙い

 文芸春秋2月号の記事に大阪府橋本知事と堺屋太一氏との対談記事が載っていました。この対談の中で、堺屋氏は子供の金銭教育について次のように述べています。

 「いまの教育は、社会で生きるための最低限のことを教えてないですよね。その最たるものが、お金について、義務教育の教科書にまったく書かれていない。私は早稲田大学の金融大学院の代表をしているんですが、キッズ・プログラムで子供たちを集めて『十万円もらったらどうしますか』と訊ねると『貯金します』という。では、『貯金とは何ですか』と訊ねると答えられない。『いまの欲望を抑えて将来に備えることですよ』と教えます。そんな簡単な常識こそ、義務教育で教えなければならない。」

 学校側も子供に役立つ金銭教育を模索しています。しかし、何をどのように教えて良いのか分からないのが実情です。金銭教育イコール、経済の仕組みを教えることだと考え「株式学習ゲーム」や「電子マネーの使い方」といった投資や金融の技術的な面をいきなり教えることに違和感を持ちます。

 2006年と2007年のエッセイで、さいたま市うなぎ祭りで「子供ハローワーク」の活動を行ったことを報告致しました。また、高校生向けに「お金に関する七つの習慣」ハンドブックを作成したこともエッセイでお伝えしました。いずれも働いてお金を得ることがテーマとなっています。これらは私が所属しているNPO法人くらしとお金の学校の金銭教育プロジェクトが行った活動です。プロジェクトの目標の一つが学校の先生と協力しての金銭教育です。昨年12月、ようやくその機会が巡ってきました。

北区桐ヶ丘郷小学校

 赤羽駅から徒歩25分のところに桐ヶ丘郷(きりがおかさと)小学校はあります。生徒総数は約400名、各学年2クラスずつ、大規模団地に接した一角にある標準的な規模の学校です。

 桐ヶ丘郷小学校は、いちはやくインターネットを活用し、外国の小学生との国際交流プログラムを取り入れるなど社会とつながる体験機会を多く与えることを校長の方針としています。金銭プロジェクトメンバーのお子さんがこの学校に通っていることから、今回の金銭教育のお手伝いが実現しました。

 早速金銭プロジェクトリーダーと中心メンバーによる授業プログラム作りが始まりました。授業の対象は3年生のクラス。3時限と4時限目の「総合的な学習時間」枠を使っての授業です。限られた時間で子供達に出来るだけ分かり易く、また多くの気付きを与えることを目指した教材作りです。テーマは、やりくりの必要性や外食との違いといったお金に関する意識を身につけてもらうものです。

カレーライス作りは大興奮

 「みんなで作ろう、こんばんの夕食」、これが授業のタイトルです。子供たちは何が始まるのが興味津々(しんしん)です。担任の先生の号令で、机の配置が5名単位の班単位に変えられます。そして先生からプロジェクトメンバーが紹介され、2時間の授業が開始されました。

 プロジェクトリーダーから生徒に向かって挨拶と今日の授業の課題が説明されます。リーダーは現役のワーキングマザーですから、子供たちへの語りかけは慣れたものです。

ゲームを考案した中心メンバー

そして、実際にプログラム作りの中心となったメンバーが、班単位で行う作業の内容と手順を説明します。作業は皆で相談しながらおいしいカレーを作ることです。

 各班では先ずメンバーの役割を決めます。「僕がリーダー」「私が計算係り」といった声があちらこちらから聞こえてきます。役割が決まった後は、教室中興奮のるつぼです。最初の共同作業はどんなカレーを作るかを話し合って決めることです。事前の宿題として、それぞれの家庭で作るカレーの具材をお母さんから聞き出してくることになっていました。ビーフカレーにするのかシーフードカレーにするのか意見調整に難航する班が続出です。

 限られた時間で子供達に達成感を味わってもうらためにはタイムキーピング(時間管理)は重要です。中々意見の集約が見られない班には、NPOメンバーが意見の食い違いをガイドしていきます。どうしても一本化できない場合、最後の手段はジャンケンで決定です。

 カレーの種類が決まると、次はカレーの中に入れる具材、つまりレシピを細かく決めます。隠し味として林檎や蜂蜜を入れるのか入れないのか、この議論はやはり女の子がリードする姿が目立ちます。レシピに沿って買い物が始まります。学校近隣のスーパー3店のチラシが配られています。それを参考にジャガイモや豚肉の値段を調べてレシピに書き込み、トータルの材料費を計算していきます。

りんごはどこに載っている?

 与えられたタスクはカレーの他に飲み物とデザートまで用意することです。男の子たちも負けてはいません。スーパーのチラシに載っていない材料についてはNPOメンバーが用意した材料の絵と値段表が教室の後ろに展示されています。女の子が三つのチラシを見て値段を比較している様子は、実に様になっています。

 材料の値段を調べる子供の横で、出来上がり作品の絵を書くことになった子供が画用紙に書き始めます。最後に各班の発表があるのです。カレーは10人分を作ることと、デザートや飲み物を入れた全体の予算が2,000円を超えないことが事前に説明されています。

堂々とした発表

 後半戦、計算係りが苦戦しています。皆が勝手なリクエストを出した結果、2,000円をオーバーする班が出てきました。予算内に納めるため何かを削らなければなりません。またもや紛糾です。そんな班には、リーダー役の子供に判断するよう促します。時間はどんどん迫ってきます。余裕の表情を見せる班がある一方、作業が遅れている班では、絵の仕上げに全員が取り組んでいます。

 そしていよいよ発表の時間となりました。発表の班全員が前に出てきます。画用紙に書いたカレーの絵を両手で大きく掲げた子の横で、リーダー役の子から、作ったカレーの名前、掛かった材料費そして自分たちのカレーの特徴などが発表されます。との班も堂々とした発表です。司会役のNPOメンバーが質問します「工夫したところはどこですか?」「苦労した点はありましたか?」。司会と発表者たちのやりとりに対して笑いが起きます。

私たちの考えたカレーで〜す

 全員の発表が終わると、黒板には各班の作品を描いた画用紙が貼られています。クラスの一人ひとりが一番良かったと思う班の画用紙に赤いシールを貼っていきます。勿論、自分の班には貼れません。シールが一番集まった班に優秀賞が渡されます。優秀賞以外にも幾つかの特別賞が用意されており、受賞される班が発表されるたびに教室には喜びの声がこだまします。

ゲームは終わっても授業は終わらない

 ゲームはここまでですが、授業はこれで終わりではありません。各班の計算した材料費は一人分当り大体150円から200円の間に収斂(しゅうれん)したことを確認した後、もし近所のファミリーレストランでカレーセット(サラダ、飲み物付)を注文したら幾らぐらいかを問います。「500円くらい」「1,000円くらい」「1,500円くらい」、それぞれに手を上げてもらいます。「1,000円くらい」に手を上げる子供が一番多くいます。

 更に子供たちに問います。ファミリーレストランで食べるカレーセットが1,000円を超えるのに、何故家でつくるカレーセットは200円も掛からないのだろうか?その差は何でだろう?

 「電気やガス代がレストランの料金には含まれているから」「お店の場所代が必要だから」といった答えが返ってきます。そして「お店で働いている人の給料が必要だから」といった答えも出てきます。どれもその通りです。子供たちなりに世間の仕組みを理解していることが分かります。

 もし、毎日レストランで食事をしていたらお金がいくらあっても足りなくなります。毎日の献立を考え、家計のやりくりを行ってくれているお母さんへの感謝の思いを至らせたところで授業が終わりました。

 今回の授業は学校側や担任の先生にも大いに刺激になりました。普段の授業では見ることのない子供たちの姿を担任の先生も知ることが出来たのです。副校長先生から、早速次は4年生対象の金銭教育を行って欲しいとの申し出がありました。

 今回、私は当日のゲームのお手伝いという形で参加しました。子供ハローワークの活動では30名規模のボランティアの協力が必要でした。それに比べれば小さな規模の活動ですが、子供たちの活き活きとした姿に接する度合いは、はるかに大きかったように思います。そして、子供たちへの金銭教育を学校の先生と一緒に行う姿が具体的にイメージできるようなりました。

 もう一つ、私の役割がありました。それは活動の記録を残すことです。子供たちのカレー作りの様子を早速アルバム(PDF)の形にまとめてあります。当日の臨場感を是非皆様も味わって頂けたら幸いです。

'09.1.26  木下 利信