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首相の仕事


 「仕事のコツ講座」、これは私が独立系FPの仕事と平行して取り組んでいる活動です。FPの屋号が「FP暮らしのコツ」ですから、両方とも“コツ”がキーワードとなっています。

 国語辞典でコツの意味を調べると「ものごとを処理する要領」と書いてあります。「仕事のコツ講座」では、サラリーマンやビジネスパーソンとして会社や組織で働くことのコツを若い人に伝えることを目的にしています。また「FP暮らしのコツ」ではお金にまつわる考え方やお金との付き合い方のコツをお伝えしています。

 そして「仕事のコツ講座」「FP暮らしのコツ」両方に共通しているコツは“問題解決の要領”です。

仕事の始まりと終わり

 仕事のコツ講座では、受講生に必ず最初に尋ねる質問があります。それは「仕事は何時(いつ)始まって、何時(いつ)終わると考えていますか?」というものです。

 昔風に言うと「朝出勤してタイムカードに打刻した時」が仕事の始めで、「夕刻退社のためタイムカードに打刻した時」が仕事の終わりとなりますが、現在では「朝自分のパソコンの電源を入れた時」が仕事の始まりで、「夜パソコンをシャットダウンした時」が仕事の終わりと言った回答が一般的です。

 そのほか、「朝家を出た時から帰宅までが仕事の時間」「仕事のことは一時も忘れることはないので24時間が仕事タイム」あるいは「月曜日の朝に始まって金曜日の夜に終わる」といった答えが続きます。

 ビジネスの世界では仕事の始まりと終わりの定義は決まっています。「仕事は目標を設定した時に始まって、目標を達成した時に終わる」、これにつきます。目標達成に何年、何ヶ月もかかることもあります。また毎日その日の内に達成する目標もあります。どんな大きな仕事でも、また細かい仕事でも始まりと終わりがあるのです。

 仕事の要領が良いということは、同じ仕事をしてもより短期間で終えることができたり、期間は同じでもより少ない労力でこなせる、すなわち目標達成ができることなのです。そして与えられた仕事がしっかりできるようになると、より大きな仕事(目標)が与えられるようになるのです。

 経験の不足している人や未経験の分野で仕事をすると目標が未達成のまま終わる確度が高まります。そこには必ず目標未達の原因・理由が存在します。その原因・理由を正しく理解することで仕事の要領、すなわち目標達成能力が磨けるのです。そのことの“コツ”を仕事のコツ講座で伝授しています。

日本と米国の政治家の違い

 2007年8月のFPエッセイ「出てきた年金」で紹介した米国コロンビア大学カーティス教授が政治家に求められるものとして[1]オプティミスティック(楽観主義)、[2]オネスティ(誠実・高潔)、[3]ホープ(希望)の三点が重要だと指摘しています。

 「誠実・高潔」が政治家の資質として重要であることに異論はありません。我々が政治家に裏切られたと感じるのは、その政治家の誠実さや高潔さに疑問を抱いた結果という経験は何度も味わっています。

 「楽観主義」「希望」については日本人にはちょっとピンとこない点かも知れません。ケネディ大統領が当選した理由はまさにこの点が米国民に評価されたからでした。そして現在の大統領予備選挙で若手のオバマ氏の評価がうなぎ昇りなのも同じ理由です。

 カーティス教授は40年間日本の政治家を観察しています。日米の政治家の違いとして際立っているのが国民に訴える姿勢だそうです。日本の政治家は“悲観論を語る”のに対し、米国の政治家は“楽観論を語る”というものです。確かに昨今の日本の政治家の論争は相手の足の引っ張り合いばかりが目立ちます。問題が発生(発覚)すると、その責任追及にものすごいエネルギーを使いますが問題解決の動きは圧倒的に弱かったり遅かったりします。マスコミの取り上げ方が偏っているのも要因だと思いますが、政治家自身が政治家の仕事をどのように自覚しているのか疑問が生じます。

三人の首相の仕事振りは?

 エッセイの冒頭、仕事の始まりと終わりの定義を説明しました。小泉元首相、安倍前首相そして現職である福田首相の仕事振りを見てみます。

 小泉首相は郵政解散選挙で圧勝しました。この総選挙の論点は郵政民営化を支持するか否かでした。そして結果は「郵政民営化を支持する」でした。この瞬間、小泉首相にとって最重要の仕事が再度開始(目標設定)されたのです。そして、郵政民営化法案が可決されたことによりこの仕事が完了(目標達成)したのでした。目標達成の原動力が世論の支持率だったのですから、郵政民営化選挙そのものが小泉首相の目標達成の手段だったことが後から分かります。

 郵政民営化の政策が良いか悪いか、あるいは好きか嫌いかを問うのではなく、首相として決めたこと(目標設定)をやり遂げたか(目標達成したか)を問えば、小泉首相は“仕事をした内閣“と言えるのです。

 小泉首相の後任となった安倍首相の場合はどうでしょう。「美しい国ニッポン」そして「戦後レジームからの脱却」を標語に掲げ「教育基本法の改正」や「北朝鮮による日本人拉致問題解決」「サミットで地球温暖化対策のイニシアチブを取る」等の目標に向かって活動を開始しました。これらの目標の是非、あるいは国民が理解できていたか、賛同していたかは別として、安倍首相は自分が成し遂げたいことを語って(目標設定して)動きを起こした、すなわち仕事を開始したのです。

 しかし、結果は昨年7月の参議院議員選挙の歴史的大敗により政治的求心力を失い、衆参ねじれ国会最初の試練となった「テロ特措法の再延長」の見込みが絶たれたことを契機に辞任に追い込まれました。つまり、安倍首相の仕事は“目標未達成”の状態で終わったのです。

 安倍首相の突然の辞任を引き受けた形で現在の福田首相が誕生しました。「希望と安心のくにづくり」、福田首相が掲げた基本理念です。では、この理念にもとづいて具体的に取り組むテーマは何でしょう。緊急課題であった「テロ特措法の再延長」は実現しました。しかし、その後に取り組むべき(取り組みたい)目標は国民の前に示されているでしょうか。答えはノーだと言わざるをえません。

 衆参ねじれ国会で野党対策が思うようにならない事情は理解できます。明確な目的、目標を持たない場合、行動は目の前にある問題への対応が中心となります。対応している姿は一見仕事をしているように見えますが、国のトップとしての仕事は“周囲の状況に合わせて仕事をする”という“対応”が最重要ではないはずです。

 つまり、福田首相の首相としての仕事はまだ始まっていないのです。もしこのまま“対応の連続”で首相の座を降りることになった場合、福田首相は“仕事を始める前に終わった内閣”ということになります。

 首相としての仕事をやり遂げた小泉氏、首相の仕事に取り組んだが未達成のまま終わった安倍氏、そして首相としての仕事にいまだに取り組めていない福田氏というのが私の評価です。

自分で作る目標と与えられた目標

 仕事の開始となる目標設定には二種類あります。自分で作る目標と他人から与えられる目標です。前者を「設定目標」、後者を「付与目標」と言います。

 ライスワークの目標はほとんど付与目標です。次から次へ目標が与えられます。時には余りの目標の高さや多さに最初から仕事に取り組む意欲をそがれることもあります。しかし、これらの付与目標を一つ一つ達成することで会社に対しては成果を与え、自分に対しては経験を積み重ねることにつながります。

 一方、会社の経営者や国のトップである首相の最大の任務は目指すべき姿となる目標を定めることです。目標設定は実は大変なことです。目標が未達成の場合は責任問題になります。

 目標が未達成となる原因・理由には幾つかあります。目標達成の手段・方法が不適切、やる気や意欲が不十分、更には組織内のコミュニケーション不足が原因となることが大半ですが、大きな目標が未達成で終わる場合の最大の原因は“目標自体に存在している”ことが多いのです。

 つまり、設定された目標が「それが何のためという目的が明確になっていること」が重要なのです。目標を達成するための手段を考えそれを実行するのは会社の従業員であり、役人や国民です。この実行部隊が目標の背景にある目的に共感することが重要なのです。これが欠けると大きな目標ほど達成の確度は低下します。逆に、何のためという目的とそれに沿った目標に共感が生まれると困難と思われる目標も達成できる確度が高まるのです。まさしく「プロジェクトX」の世界です。

 小泉首相が「なぜ郵政民営化という目標が重要なのか」を説明した時、「民でできることは民に任せる」という国の姿へ国家の仕組みを変えるという解散総選挙の“目的”を分かりやすく端的に語りました。そして多くの国民は「民にできることは民に任せる」国の姿に共感したのでした。政治家の説明責任能力(アカンタビリティー)を示した瞬間でした。

個人の目標は自らが責任を持つ

 政治家、特に国のトップは目標設定が仕事です。それも意味ある、共感を呼ぶ目標設定です。そして役人は与えられた目標の達成が仕事です。しかし今までの日本の姿は役人が政治家を使って目標設定の実権を握っているように私の目には映ります。

 役人には、政治家が政治家の仕事をしていないから、仕方なく我々役人が行うのだという言い訳があるのかも知れません。しかし、政治家と役人の大きな違いは目標未達成に対して責任を取るか取らないかです。やはり責任を取る立場の政治家に本当の仕事をして欲しいと願います。

 FPが相談にのる相手はすべて個人です。国や企業の場合は、目標設定と目標達成はそれぞれ異なった立場の組織で行いますが、個人の場合は一人あるいは夫婦単位で、自ら目標を設定し、またその達成に向かって活動を起こす必要があります。すなわち個人の場合は目標未達成の責任を他人に課すことが許されないのです。

 組織の場合も個人の場合も目標達成の一番の推進力は「意味ある目標」を持てるかです。何のために蓄財をするのかあるいは節約をするのか、自分で納得する目標が得られなければ途中で挫折することになります。老後資金は多ければ多いだけ良いとか、なるようになるさといった考えでは具体的行動は生まれません。

 アドバイスをするFPはクライアントのライフスタイルをお聞きすることが大切です。ライフスタイルはその人の人生目標と重なります。自分のライフスタイルを実現あるいは維持するために欠けている部分を明らかにすることで具体的なファイナンス目標、それもクライアントにとって意味ある目標が設定できます。

 クライアント自身にとって意味ある目標が明確化され、目標達成の活動プランをプロのFPからのアドバイスで立案できた段階で目標達成の第一歩を確実に踏み出せるのです。

 そんなクライアントの姿を目にした時、カーティス教授が掲げる政治家に求められる三つの資質[1]オプティミスティック(楽観主義)、[2]オネスティ(誠実・高潔)、[3]ホープ(希望)は、クライアントから信頼される独立系FPにも当てはまることに気づくのです。


'08.4.24  木下 利信