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タイトル

男の料理


 1月のFPエッセイテーマは「2007年4つの目標」でした。目標の一つ「今年新たに始めること」として「男の料理」を掲げました。

 3月は私の誕生月です。妻から誕生日プレゼントに何か欲しいものはないかと聞かれた時、例年だと「何でも良いよ」と返事するのですが、今年は「料理教室の受講券が欲しい」と即答しました。勿論、妻は喜んで料理教室の申し込みをしてくれたのでした。

 5月から待望の料理教室が始まりました。毎月1回、全部で12回、一年間通してのレッスンです。選んだ料理教室はベターホーム協会の、その名も「基本料理の会・男性クラス」です。


料理が趣味の上司

 私が現役で勤めていた20年前、当時の上司である開発担当役員から食事に招待されたことがあります。招待されたのは我々を含め、4組の夫婦でした。いずれも、同じ開発プロジェクトで働いていた同僚の夫婦です。プロジェクトは全社から熱い注目を浴びていた重要商品の開発です。上司の開発担当役員は、このプロジェクトの困難さを良く理解していました。そして開発成功のため、開発責任者、技術担当、設計担当の各部長、そしてプロジェクト推進担当である私を含めた全員がチームワーク力を発揮する必要があることも。

 会食の場所は、役員の自宅でした。妻を同伴することも、役員自ら調理したものが振舞われるのも初めての経験です。役員の奥様を含めて10人分の料理をすべて一人で準備してくれたのでした。料理は中華です、テーブルの上に何枚もの大皿が並び、そこに次から次へと熱々の料理が運ばれてきました。食材は、横浜中華街へ自ら出掛け、吟味の上、手に入れたものです。高級中華レストランの料理に勝るとも劣らない美味しさです。

 役員の目論見通り、二年後このプロジェクトは大成功を収めました。開発プロジェクト成功の鍵の一つがプロジェクトメンバーのチームワークだったのですから、実に効果的な食事会だったと言えます。

 この役員は社内報の自己紹介欄でも、料理が趣味だと公言していました。何故、料理に興味を持ったのか、その理由は「商品の設計と料理に共通することが多いから」だそうです。当時は、あまりピンと来ない理由だと思っていましたが、料理教室に通うようになって、この役員の言っていたことが良く理解できるのです。

料理はレシピが命

 今では日本でもレシピという言葉が一般的になっていますが、20年以上前にはそれほど知られていない言葉でした。しかし、欧米では結婚する娘に母親からレシピが代々手渡されているそうです。日本でも嫁が姑から嫁(とつ)ぎ先の料理を教わります。家庭の味が伝承されていくのですが、そこには見て、やってみて覚える方法があっても、料理法を文章で引き継ぐといった伝統は聞きません。

 25年前に初めて海外赴任した時、妻はこのレシピの世界を知ったのです。米国では良く自宅の食事に招待されました。そこで振舞われた料理が気に入った時、妻はそこの奥様からレシピを頂くのです。レシピが頂きたいというのは、その料理がとても気に入った証拠ですから、どの奥様も喜んでレシピを差し出してくれました。お返しに、我が家へ食事の招待するのですが、問題は当時日本料理の良いレシピがなく苦労したことです。10年前、二度目の海外赴任の時は、代表的な日本料理の調理法を写真と英語版のレシピが書かれた本を手に入れ、大変重宝しました。

 レシピ(recipe)とは料理の調理法を記した物のことです。料理に使う食材、調味料の分量や配合を示すだけではなく、作り方の“手順”まで含んでいるのがみそです。

料理教室で学ぶこと

 私が通い始めた料理コースは「基本料理の会・男性クラス」の名のごとく、基礎の基礎を学ぶクラスです。クラスは40代、50代中心で毎回およそ15名が参加します。すべての動作が超スローです。包丁の使い方は見ていて危険を感じるほどです(笑)。3人の先生が4から5テーブルに分かれた生徒を忙しく指導に回っています。

 今まで学んだ料理は「切り身魚の煮付け」「天ぷら」「あじの塩焼き」「親子丼」「いわしのかば焼き」「肉じゃが」です。これに毎回副菜や汁物の2品が加わるので、計18品の料理を学んだことになります。1年間のコース全体では、倍の36品のレシピに目を通すことになるわけです。

 しかし、このコースを学び終えただけで、いきなり包丁さばきが上手になったり、短時間で調理ができるようになる訳ではありません。一ヶ月経つと先月習った料理のことをすっかり忘れてしまうような生徒の集団です。

 1年間通じて料理教室に通って得るものは幾つかあります。先ず、厨房に立つ抵抗感がなくなります。そして、毎回家族の料理を作ってくれいる妻への感謝の気持ちがより大きくなります。料理の肩代わりは無理としても、食事の片付けや皿洗いを積極的に手伝う気持ちが生まれます(もっとも、この点は個人差が大きいと思いますが)。

 肝心の料理の腕前についてはどうでしょう。先述した通り、殆ど上達は期待できません。しかし、レシピの読み方はかなりのレベルまで習得できるのです。レシピには、料理手順を示す図や写真がまったく使われていません。すべて文章です。それも一つの手順が一行の文章で簡単に説明されていることが大半です。例えば、野菜の切り方をこう表現しています、「大根をいちょう切りする」「ナスを半月切りにする」「ごぼうの皮をこそげる」「きゅうりを小口切りにする」等々です。

 以上の表現が何を意味するのかを知らなければ、レシピを眺めていても自分がすべき行動がイメージできないのです。しかし、料理教室では、切り方の意味を教わり、多少なりとも自分で包丁使いを体験することで“言葉”の意味を理解するのです。つまりレシピを読み取れる力が付くのです。


料理の「さしすせそ」

 料理と設計は、確かに良く似ています。勿論、両方ともモノ作りなのですが、良いモノを作り出すためには、素材(材料)、それらの分量(組み合わせ)、そして作り上げる“手順”がとても大事です。これらのいずれかが異なると必ず結果(味)が変化します。つまり失敗作が生まれるのです。

 料理の味を左右する調味料の配合(計量)を正確に行うことを、料理教室では何度も先生から言われます。目分量ができるのは、同じ料理を何回も作り続けたプロ(勿論、主婦も家庭料理の立派なプロです)だからできるのです。

 味付けを左右するのは調味料の配合だけではありません、異なる調味料を加える“順序”を知る必要があります。「料理のサシスセソ」は、余りにも有名な言葉です。サは砂糖、シは塩、スはお酢、セは醤油、ソは味噌を表すことを知っている男性も多いのではないでしょうか。つまり、サシスセソの順序でこれらの調味料を加えることを教えています。

 でも、なぜ塩は必ず砂糖の後でなければならないのでしょう。理由は、砂糖と塩の分子の大きさが異なるからです。塩は、砂糖の分子よりもはるかに小さいために、とても味がしみ込みやすく、食材の中にグングン塩分がしみわたってしまい、後から砂糖の分子が入ろうとしても、入ることができないのです。 しかも、塩には水分を引き出す作用もありますから、食材が引き締まって、ますます砂糖がしみ込みにくくなってしまいます。 料理教室の先生の説明に納得です。なぜ、先に塩もみをするのか、なぜアクをこまめにとる必要があるのか、なぜ一旦火を止めるのか等々、料理の世界には手順とコツに関する情報が満載です。

基礎とコツの重要性

 自分で好きな料理を作ってみたいとの単純な思いで始めた料理教室ですが、料理の手順とコツの世界を覗くこととなり、より一層興味が深まりました。勿論、料理のプロになる気持ちは毛頭ありませんが(笑)、いつか自分で創作した料理のレシピを完成したいと考え始めています。

 FPが依頼人の抱える問題解決の支援、お手伝いをする際にも手順がとても重要です。問題の定義があいまいなまま解決策の提言は行えません。今回料理の基礎を学んだことが、FP相談にどこまで生かされるか分かりませんが、「FP相談のサシスセソ」が見つかれば、きっと腕の良いFPに近づくことができるはずです。

 20年前の上司が作ってくれた料理の味は忘れてしまいましたが、「料理と設計には同じものがある」との言葉はずっと忘れられずにいました。今回、料理教室を体験したことで、この上司の言葉には、実に“味わい深い”意味があることに気付かされたのです。


'07.10.22  木下 利信





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