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30年後の格差(後編)


  「30年後の格差(前編)」をお読みなられた20代〜30代の方は、30年後3,000万円にチャレンジする勇気を持たれたことと思います。後編は、確定拠出年金制度を導入した企業にお勤めの方に是非知っていただきたい「格差」についてお話したいと思います。

従来の年金制度は制度疲労

 日本に確定拠出年金制度が導入されたのは、2001年10月でした。確定拠出年金のことを企業によっては「DC年金」と呼ぶところもあります。確定拠出年金制度導入から5年が経過した、昨年10月時点で、制度導入企業は7千社、加入者数は200万人に達しました。

 確定拠出年金のことを簡単に説明しておきます。企業と労働組合(社員)とが合意することで採用できる新しい形の「企業退職年金の積立方式」です。従来の退職年金は、各企業の退職年金規定でその算出方法が決められており、勤続年数、退職時の本給等で退職年金の額が決まりました。同期の桜同士であれば、受け取る退職年金に大きな差が生じません。つまり、横並び方式の制度です。

 退職年金が確実に支払えるようにするため、企業は毎月積立を行います。企業は社員の幸せを考え、毎月積み上がっていく掛金を運用することで、実際の積み上げ金額より多い退職年金を支給することにしています。勿論、退職時に一時金として受け取ることも可能です。

 運用が上手く行っている間は、何等問題ありません。しかし、運用がマイナスになったり、予定していた利率より低い運用結果しか得られなくなると、企業は問題を抱えます。退職年金支払のため積み上げてきた金額が、実際に支払いを約束した年金額に対して不足する分を穴埋めする必要があるからです。実際、ゼロ金利時代が長く続いたことで、積立金不足が発生した企業が続出しました。

 一方、従来の退職年金制度は、若い人にとっても使い勝手の悪いものになってきました。昔と比べ、若い人の転職機会が増えています。従来の制度では勤続年数が長くなればなるほど退職年金額が有利になるように設定されています。従って、他の条件はまったく同じで、一人は30年間同じ企業に勤めた場合と、10年ごとに二回転職した場合とでは、受け取る退職年金に大きな差が生まれ、転職者に不利な制度となっています。

 つまり、従来の退職年金制度は企業にとっても社員にとっても、使い勝手の悪いものになり、制度疲労を起こしていたのです。

確定拠出年金二つの特徴

 確定拠出年金制度は、企業が社員のため毎月退職金を積み立てる点は従来と似ています。しかし、大きく異なるのは、積み上げたお金を運用するのは企業ではなく社員である点です。もう一つ異なるのは、社員が転職した場合、それまでの積立金を次の会社へ移動させることが出来ることです。これをポータビリティーと言います。

 企業は、毎月一定額(1万円ぐらいが多い)を積み立てるだけ、つまり確定した額を拠出することで、後のことは一切タッチしません。積立金は社員一人ひとりの専用運用口座に振り込まれます。社員は、予め用意されている複数の金融商品(一社当たり平均14本用意されています)のうち、好きな商品を選び、運用を開始します。

確定拠出年金導入から5年、そして分かったこと

 この制度が導入されて5年経ち、その実態が明らかになってきました。企業が拠出した積立金を、銀行預金に代表される元本確保型商品のみで運用している加入者の比率が極めて高いことが分かってきたのです。運用残高でみると元本確保型の残高が61%、リスク商品である投資信託の残高が39%の割合になっています。これは、全加入企業の全国平均です。

 ある大手の確定拠出年金運用会社が、加入者の運用実績の結果(PDF)を公表しています。それによると、制度導入以来の運用実績平均は6.7%です。しかし、分布をみると運用実績が1%以下の加入者が36%をしめています。一方15%以上の運用実績を上げている加入者も15%います。残り約半数が1%から15%の運用実績の間にばらついているのです。

 つまり、加入者のおよそ二人に一人が「元本確保型商品オンリー」もしくは、一部投資信託を組み入れているものの、「元本確保型商品を中心」に運用しているということです。この方々は、元本を割り込む“心配”からは逃れられますが、今の金利水準が続くとする元本が増える“機会”からも遠のくことになります。

 法律では、社員が選択する金融商品の内、“少なくとも一本”は元本確保型の商品を用意することを義務付けています。残りは投資信託の商品を多く揃えることを前提にしているのです。つまりこの制度では、なるべく多くの加入者が積極的に投資信託による運用を行なうことを期待していたのです。

毎月1万円から始まる将来の備え

 現在、確定拠出年金加入者の運用残高は一人平均約100万円と言われています。30歳の社員が今後60歳までの30年間、毎月1万円ずつの拠出金を積立てたとすると、その合計は360万円になります。これに100万円加えた460万円が、この社員の退職金一時金もしくは退職年金の原資となります。仮に年利1%、3%、6%で複利運用できたとしたら30年後の積立額はそれぞれ560万円(積立原資に対してプラス100万円)、830万円(同プラス370万円)、1,590万円(同プラス1,130万円)になります。

 前編では、年額33万円を30年間、年利6%の複利運用で積み立てると3,000万円になることを説明しました。サラリーマンで確定拠出年金に加入されている方は、実は33万円のうち12万円(月額1万円)を会社が自動的に積立ててくれているとも考えられます。従って、残り21万円ずつ毎年自分で積立てれば良いことになります。これは月額17,500円です。年二回の賞与時に45,000円ずつ積立てたとすると、毎月の積立額は1万円となります。ぐっと身近な数字になります。

転職の機会を無駄にしている?

 3/1の日経朝刊に「確定拠出年金、転職者の6割が運用放棄」の見出しがついた記事が載っていました。確定拠出年金制度を導入していた企業を退職すると、それまでの積立金残高は本人に返されます。しかし、実際に引き出せるのは60歳になってからです。転職先が同じ確定拠出年金制度を導入していれば、転職先企業の自分口座に移管することでことが足りますが、そうでない場合は、個人型確定拠出年金の口座を開き、そこで運用を継続することが出来ます。しかし、退社後6ヶ月以内に個人型確定拠出年金口座の開設手続きを終えない場合は、自動的に厚生年金基金に積立金が移管され、60歳まで“保管”されることになります。折角の運用機会を失っているのです。

 転職の目的は「やりがいのある仕事を求めて」が第一の理由ですが、少しでも収入を増やしたいとの思いがそこに重なっているのが普通です。しかし、実際は6割の人が運用を放棄している実態を見ると、大きな勘違いや無理解が存在していることに気づきます。

若い人のための制度

 確定拠出年金に加入した社員を対象に意識調査をしたところ、確定拠出年金や投資運用に関して学歴や職種、性別による差は殆どなく、若年層と高年層で大きな差があることが分かりました。若年層は「関心薄い」「理解度低い」「預金比率高い」、これに対して高年層は「関心高い」「理解度高い」「投資信託比率高い」と見事な対比です。

 確定拠出年金制度は誰のためでしょう。勿論、全社員のためですが、既に高齢となった社員の方よりも、これからまだまだ長期に渡ってライスワークを続ける若い人にこそ魅力的な制度のはずです。

 今30歳のあなたが、60歳となる30年後に、隣に席を並べていた同期の仲間と、もらえるであろう退職年金積立残高の差が1,000万円あることに気がついたとしたら・・・。多くもらえる方であれば、嬉しい気分を味わえますが、もし少ない方だとしたら、「知らなかった」といって後悔することになるかも知れません。

 「投資と運用は自己責任」の世界に、知らぬ間に飛び込んでいるのです。この世界から逃れて生活するか、味方につけて生活するかの選択でもあります。

プロの知恵を借りて、納得した選択をする時代

 「時間」という『武器』は、誰にでも平等に与えられていますが、この武器を活用するか、錆び付かせるかは、その人の意識と行動で異なってきます」、これは前編の結びの言葉です。しかし、武器だけあっても、その正しい使い方を学習しなければ役立ちません。へたすると、リスクに振り回され自分自身を傷つけ兼ねません。武器の性能・仕組みを正しく理解し、納得して使いこなす“コツ”をプロからしっかり学ぶ時代になったのだと思います。

 これに応えるFPも、一層の鍛錬が求められる時代でもあるのです。


'07.3.31  木下 利信





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