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ドリームハウス


 先月、家内と共に米国シアトルを中心とした旅行に出かけました。今回の旅行の目的は十数年来、家族ぐるみの付き合いをしている三組の夫婦を訪ね歩くことでした。広いアメリカのことですから、三ヶ所訪問のためレンタカーを借り、総走行距離1,800マイル(2,880km)の大旅行となりました。

 今回は三組の中で、シアトルから一番離れた場所に住んでいるK夫婦の物語をお話します。町の名はホワイトフィッシュ(モンタナ州)、シアトル(ワシントン州)から880km東に行ったところです。K夫婦は最近大きなログハウスを建て、我々が訪れることを楽しみに待っていました。

 家内の目的は、10年振りに会うK婦人と、大きく成長した子ども達との再会、それに新しい家を隅々まで拝見することです。私は、FPとして、K夫婦のライフプランや夢、それに資産形成過程を聞かせて頂くことでした。

 シアトルを早朝6時に出発し、高速道路を6時間、更に一般道路(といっても制限速度は100km)を4時間、一日がかりの移動で、何とか夕暮れ前に到着しました。日本を発つ前にインターネットでドライブの経路と現地の拡大地図をプリントして行ったのですが、目的の番地に着ついても家が見当たりません。ようやく森の中の道からK家の入り口を示す手製のサインを見つけました。何と25エーカー(3万坪)の敷地の中に家があったのです。

 敷地が広いだけではありません、家も超ビッグサイズです。建坪は225坪(8,000スクエアフィート)もあります。正しくドリームハウスです。益々私の疑問が膨らみます。何故、こんな田舎に住まいを構えたのか?ご主人の通勤はどうしているのか?土地建物の費用はどう工面したのか?半年は寒い冬に覆われるところで暖房費を含めた維持費は大丈夫か?等々です。三日間の滞在中、これらの疑問が次々と解けて行きました。



 ご主人はネイビー(米海軍)のパイロット、いわゆるトップガンでした。十数年前、ご主人の勤務の関係で家族が日本に住んだ時に知り合ったのです。10年前本国へ帰還し、6年前にネイビーを退役、民間航空会社のパイロットに就職しました。現在52歳、現役バリバリの世代です。トップガンのコマンダー(司令官)を務めていてネイビーの中では比較的上位の収入を得ていたことと思いますが、決して大金持ちとはいえない、実に普通の夫婦です。

 そんな夫婦が何故ドリームハウスを築く決断をしたのか、それなりの理由がありました。これから先、一生引越しをせずに暮らせる終(つい)の棲家を持ちたいとの“強烈な思い”です。ネイビー時代、3人の子どもを連れて17回の引越しを経験しています。本国に戻った時、奥様の母親の生まれ故郷を訪れ、その環境にご主人も惚れ込み16万ドル(1,840万円、115円/ドル換算)で原野に近い森を買ったのです。決して投資が目的ではなかったのです。しかし、ホワイトフィッシュという町は、グレイシェア国立公園の麓に位置する小さな町で、夏は避暑地、冬は山岳スキーが出来る夏冬通じてのリゾート地域として近年急速に人気が高まり発展しているところでした。開発の波が彼らの土地近くにも及び、現在の価値は購入時の数倍すると不動産屋から聞かされ、当人達もびっくりです。

 土地が決まりました、次は家です。ご主人は、現在シカゴを拠点として民間パイロットの仕事をしています。ホワイトフィッシュからシカゴまで直線距離で2,500キロを超えます。どうやって通勤しているのでしょう?パイロットの勤務体系は三日勤務、四日休暇だそうです。住んでいる場所から一番近い飛行場まで車で30分、そこから飛行機を数回乗り換えて通勤しているわけです。これであれば片道の通勤に半日かかっても実質週三日間は自分の時間として使えるのです。この時間を目一杯使って建築費の削減を行なったのです。

 家の設計に1年、建築に1年半、合計2年半を費やし、3年前に完成しました。ログハウスの屋根、壁、床等の基礎部分は業者に施工を頼んだのですが、内装は全て自分達で行なったのです。それも半端ではありません、壁紙貼りやカーペット敷きは勿論、リビングのスレート(石盤)の敷き詰めや殆どの室内調度品(木製家具)も手作りで、バスルームのタオル掛け(鉄製)まで自分達で作ったのです。いくらドゥーイットユアセルフが好きだからといってとても夫婦二人だけで出来る作業ではありません。夫婦のそれぞれの父親や兄弟、従兄弟(いとこ)がこの作業に協力してくれました。まさにK夫婦を取り巻く親族一同による一大プロジェクトだったのです。また奥様は、インターネットを駆使し、必要な資材をネットオークション利用により、いかに安く手に入れるのか知恵を絞ったそうです。

 建築費用は総額78万ドル(約9千万円)でした。内60万ドル(約7千万円)は30年、年利6.4%のモーゲージ(住宅ローン)を利用し、現金で支払ったのが18万ドル(約2千万円)だったそうです。更に、現金の一部は両親から得ています。それを、両親達が長期滞在できる寝室、キッチン、バスルーム等の専用滞在スペース(今回はここを利用させてもらいました)の建築資金に充当したそうです。町が査定した家の評価額は160万ドルです。これは、いわゆる建売の物件を購入した場合の費用に相当しますから、いかに手造り効果が大きかったかです。

 但し、問題がないわけではありません。毎月の返済額がかなり多いことです。ご主人はパイロットということで高収入の職業に加え、軍人恩給も支給されることから何とかなるのかも知れません。勿論奥様も自宅で出来る仕事を行なって家計を助けています。ご主人がパイロットを辞める時期となる十数年後に、25エーカーの一部を売却することでローンの一括返済が可能となります。

 冬は長く雪に覆われる場所ですから暖房費は馬鹿になりません。暖房費のことを尋ねたら、待ってましたとばかり庭の隅に連れて行かれました。そこに小さな小屋が建っており、その中に北欧で開発されたというシステムがありました。薪(マキ)を燃やす、それで暖められた温水を各部屋の床に循環させることで暖房しているのです。朝と夕、二回大きな薪を数本投げ込むだけで、あとは殆ど費用が掛からないものでした。なにせ森を切り開いて造成したのですから薪は捨てるほどあります。実に実用的で経済的なシステムです。



 以上、私の疑問、質問にいやな顔一つせず、笑顔でかつ丁寧に答えてくれたご夫婦です。「ところでKご夫婦は、相談をするFPはお持ちですか?」、これが私の最後の質問でした。答えはイエスでした。ご主人がネイビーでまだ若かった時、上官からFPに相談することをアドバイスされたそうです。それ以降、相談するFPは何回か変わったものの今でも相談を続けているそうです。

 ドリームハウスが実現できた要因は何だったのでしょう。勿論、終の棲家を手に入れるとの夫婦共通の目標と目標達成の強い意志を持ったことがスタートですが、目標実現のための周到な準備と、周りの賛同、協力がドリームハウス実現の要因でした。その要因の一つにFPからのアドバイスも含まれていたのです。自分達でやれることはやる、一方で必要なことは親族や回りの協力を得て、またプロの知恵を得て行なうことが自然に身に染み付いている夫婦でした。

 家造りが一段落した今、奥様は町の教会やコミュニティーセンターでのボランティア活動に多くの時間を割くようになりました。自分達の夢を多くの人のサポートで実現できた、そのお返しを今度はボランティアという形でお返ししている、そう語っているように見えました。数年後、再びドリームハウスを訪れることを約束し、ホワイトフィッシュを後にしました。今回、K夫婦の資産形成の話、即ちライスワークの話しを中心に聞きました、次回の訪問ではご夫婦のライフワークの考え方について聞かせていただくことを楽しみにしながら。


'06.11.22  木下 利信





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